アイデンティティに基づく習慣は、「何を達成したいか」ではなく「どんな人になりつつあるか」から始まります。「もっと本を読みたい」ではなく「私は本を読む人だ」という前提に立ち、繰り返せるほど小さな行動を実行します。1回1回が証拠になり、証拠が十分に集まれば、そのアイデンティティを信じられるようになるからです。
次の2つの文には、微妙な違いがあります。
もっと本を読みたい。
そして、
私は読書家だ。
1つ目は、これからやりたいことを表しています。2つ目は、自分がそうだと信じている人物像を表しています。
小さな違いに聞こえるかもしれません。でも、そうではありません。
習慣を身につけようとするとき、注意はどうしても結果に向かいます。体重を20ポンド(約9kg)落としたい。5,000ドル貯めたい。本を20冊読みたい。10kmを走りたい。毎朝文章を書きたい。寝る前にスマホを見るのをやめたい。
どの目標も悪いものではありません。目標は努力に方向性を与えてくれるので役に立ちます。
ただし、目標には弱点があります。
目標は「どこにたどり着きたいか」を教えてくれます。でも、その道のりを歩く本人を変えてくれるとは限りません。
そしてどんな習慣にも、いずれ「結果はまだはるか先で、今日の行動は小さすぎて意味がないように感じる」瞬間が訪れます。
4ページ読む。
10分歩く。
10ドルを貯金に回す。
1段落だけ書く。
劇的なことは何も起きません。変身シーンのモンタージュもなければ、拍手してくれる人もいません。終わったあとも、生活はほとんど何も変わらないように見えます。
それでも、確かに何かが起きています。
自分がどんな人になりつつあるのか、その小さな証拠をひとつ作ったのです。
これは、習慣について考えるうえで最も役立つ見方のひとつかもしれません。
習慣とは、ただ繰り返す行動ではありません。「自分はどんな人間か」を、自分自身に繰り返し示す証拠です。
そして証拠が十分に集まれば、やがて自分の物語も変わっていきます。
アイデンティティに基づく習慣とは?
アイデンティティに基づく習慣は、これまでとは違う問いから始まります。
次のように問う代わりに、
自分は何を達成したいのか?
こう問いかけます。
これを自然にやっているのは、どんな人だろう?
もっと本を読みたいなら、アイデンティティは「私は本を読む人だ」かもしれません。強くなりたいなら「私はトレーニングする人だ」。お金を貯めたいなら「私は将来に備える人だ」。書くことを続けたいなら「私は書き留める人だ」。穏やかな朝を過ごしたいなら「私は一日の始まりを大切にする人だ」。
この違いが大切なのは、人の行動が報酬や結果だけで動いているわけではないからです。
自分自身をどう捉えているかによっても、行動は形づくられます。
心理学者のダフナ・オイザーマンとメスミン・デスティンは、これを「アイデンティティに基づく動機づけ」と呼んでいます。人は、そのとき意識にのぼっていて自分にとって意味のあるアイデンティティと一致すると感じる行動ほど、とりやすくなるというものです。二人の研究は、さらに踏み込んだ指摘もしています。同じ難しさでも、2通りに受け取れるということです。行動がアイデンティティと一致していると感じるとき、苦労は「それが大切なことだから」というサインとして解釈されやすくなります。一致していないと感じるときは、同じ苦労が「この行動は自分には向いていない」という証拠に見えやすくなるのです。[1]
だからといって、走ることが自然にできるようになるまで鏡に向かって「私はランナーだ」と唱え続ければいい、という意味ではありません。
アイデンティティは魔法の呪文ではありません。
行動はやはり重要です。むしろ、アイデンティティを信じられるものにしているのは、行動のほうかもしれません。
バス・フェルプランケンとウェン=ビン・スイは、習慣は自分の外にあるきっかけへの純粋に自動的な反応ではないと論じています。繰り返された行動は「自分はどんな人間か」という自己認識と結びつくことがあり、この2つは別々ではなく一緒に研究する価値がある、というのです。[2]
つまり、この関係は双方向に働きうるということです。
アイデンティティは行動に影響を与えます。
そして、行動もアイデンティティに影響を与えます。
ここに、役立つループが生まれます。
アイデンティティのループ
自分を読書家だと思ったことが一度もない、と想像してみてください。
そして、読書家になろうと決めます。
月曜日に5ページ読みます。まだ読書家になった実感はほとんどありません。
火曜日も読みます。
木曜日に、さらに10ページ。
土曜日の朝、スマホではなく本に手が伸びます。
ここで、何かが変わり始めています。
4回の読書に、人を変える魔法のような力があるからではありません。証拠が、だんだん無視できなくなってきているからです。
読書家がすることを、自分がしているのです。
こうしてループが始まります。
アイデンティティ → 行動 → 証拠 → より強いアイデンティティ → さらなる行動
このループが強くなるほど、習慣は「自分に無理やりやらせている一時的なプロジェクト」のようには感じられなくなります。
それが当たり前になっていくのです。
次のように自問する回数も、だんだん減っていきます。
今夜は読もうかな?
答えは、少しずつこう変わっていきます。
もちろん読む。本を読む人だから。
行動との向き合い方が、まるで違うものになります。
最初からアイデンティティを信じられなくてもいい
アイデンティティに基づく習慣のアドバイスが、現実離れしてしまいがちなのはここです。
「なりたい自分になればいい」とだけ言われることがあります。
でも、まだそれを信じられないとしたら?
運動を始めては挫折することを6回繰り返してきたなら、「私はアスリートだ」と言うのはばかばかしく感じるかもしれません。何年もお金が貯まらずに苦労してきたなら、「私はお金の管理が得意だ」はアイデンティティというより、マグカップにプリントされた標語のように聞こえるでしょう。
持っていない自信を無理につくり出す必要はありません。
代わりに、証拠から始めましょう。
こう言う代わりに、
私はものすごく自制心がある。
こう言ってみてください。
私は、自分との小さな約束を守る人になりつつある。
そして、ひとつ守ってみましょう。
読書家になりたいなら、1ページ読む。運動する人になりたいなら、5分歩く。貯金できる人になりたいなら、少しだけお金を移す。書く人になりたいなら、1文だけ書く。
これはミニマム習慣(最小限の習慣)の考え方と深くつながっています。最初の行動は、確実に繰り返せるくらい小さくしておく、という考え方です。
小さな行動に価値があるのは、すぐに結果が出るからではありません。
新しいアイデンティティに「始まりの場所」を与えてくれるから、役に立つのです。
アイデンティティは日常の小さな証拠でできている
私たちは、自分の変化を「大事な瞬間の連続」として思い描きがちです。
初めてのマラソン。昇進。書き上げた原稿。体重計の数字。貯金の節目。
けれど、そうした結果の裏にあるアイデンティティは、たいていもっと地味な場所でつくられています。
それは、ありふれた水曜日に起こります。
夕食後に歩くと決めていた。外は寒い。できればソファから動きたくない。
それでも歩きます。
その夜のことが、あなたの伝記に載ることはないでしょう。
それでも脳は、ひとつの情報を受け取ります。
どうやら、これは自分たちが「やること」らしい。
それが大事なのです。
運動する人は、一度の英雄的なトレーニングでつくられるわけではありません。ほとんど記憶に残らない、たくさんのトレーニングによってつくられるのです。
読書家は、本とともに過ごすありふれた夜の積み重ねでつくられます。音楽家は、誰も聞いていない音階練習でつくられます。お金の管理が上手な人は、誰も見ていない振替でつくられます。よい友人は、メッセージや電話、忘れずに祝った誕生日、そして顔を出すことでつくられます。
結果は目に見えるので、私たちはたいてい結果に目を向けます。
アイデンティティは、その下で静かに育っていきます。
無理なく続けられるアイデンティティを選ぶ
ここには、もうひとつ落とし穴があります。
新しいアイデンティティは行動を導くものであって、自分を縛る檻になってはいけません。
たとえば運動を目標にしているとします。こんなアイデンティティを選ぶかもしれません。
私は、トレーニングを一度も休まない人だ。
力強く聞こえます。
でも、とても壊れやすくもあります。
いずれ体調を崩します。旅行もします。子どもが生まれることもあるでしょう。残業もします。けがもします。休息が必要なときもあります。
完璧な行動でしか保てないアイデンティティだと、一度途切れただけで「やっぱり全部うそだった」という証拠のように感じてしまいます。
もっと長持ちするアイデンティティは、たとえばこうです。
私は、自分の体を大切にする人だ。
これなら、表現の仕方はいくらでもあります。
鍛えるのが合っているときは、しっかり鍛える。時間がないときは歩く。回復が必要なときは眠る。生活に中断されたら、また始める。
強いアイデンティティは、行動に方向性を与えてくれます。でも、状況に合わせる柔軟さまで奪うべきではありません。
習慣化がきれいなスケジュールどおりに進むことはめったにないので、これは特に大切です。ある行動が突然自動的になる「誰にでも共通の日」はなく、人による差もとても大きいのです。その背景にある研究が気になる方は、習慣化には何日かかる?で詳しく解説しています。
習慣が育つまで、アイデンティティが持ちこたえる必要があるのです。
アイデンティティを目に見える行動に変える
「もっと健康になりたい」。響きはいいですね。
でも、健康な人は明日の朝7時15分に何をしているでしょうか?
アイデンティティは、実際に目に見える行動と結びついたときに役に立ちます。
次の手順を試してみてください。
1. 方向性を決める
何を変えたいのでしょうか?
もっと本を読みたい。
2. どんな人になるかを決める
その結果を自然に生み出すのは、どんな人でしょうか?
読書を日常生活の一部にしている人。
3. いちばん小さな証拠を決める
今日、そのアイデンティティを支える行動は何でしょうか?
寝る前に5ページ読む。
これで実際に使える形になりました。いくつか例を挙げます。
| 目標 | アイデンティティ | 小さな証拠 |
|---|---|---|
| もっと本を読む | 私は読書家だ | 1ページ読む |
| 運動する | 私は自分の体を大切にする | 5分だけ体を動かす |
| 貯金する | 私は将来に備える | 週に1回、貯金に振り替える |
| 書く | 私は書く人だ | 1段落書く |
| 学ぶ | 私は一生学び続ける人だ | 5分だけ勉強する |
| 連絡を取り合う | 私は思いやりのある友人だ | メッセージを1通送る |
| 気持ちよく目覚める | 私は朝の時間を大切に守る | 寝る前にスマホを手放す |
3列目のほとんどが、いかに地味に見えるかに注目してください。
これは意図したものです。
最初にやるべきことは、目覚ましい成果を出すことではありません。
最初にやるべきことは、信じられる証拠を積み重ねることです。
証拠を集めやすくする
読書家になりたい人がいるとします。
その人は本を4冊買います。意欲的な読書リストを作ります。1日50ページという目標を立てます。新しいライトを買います。読書アプリを3つダウンロードします。
そして水曜日、疲れて帰宅したので1ページも読みませんでした。
自分を変えようとするとき、私たちには計画を「完成した自分」に似せてしまうという不思議な傾向があります。
すでにその習慣を身につけている人のルーティンを設計してしまうのです。
そして、そのルーティンを、まだ身につけていない自分に渡してしまいます。
それよりも、今のアイデンティティと次の行動との距離を縮めるほうが効果的です。
運動する人になりたいなら、シューズを目に入る場所に置いておきましょう。
本を読む人になりたいなら、本を枕の上に置いておきましょう。毎日の読書習慣を身につけるためのガイドでは、この考え方を30日間のプランにまとめています。
日記を書く人になりたいなら、ノートを開いたままにしておきましょう。
お金を貯めたいなら、振替を自動化して、証拠が勝手にたまっていくようにしましょう。
モーニングルーティンを作りたいなら、12ステップもの儀式をつくるより、確実に続けられる「起点」をひとつ選びましょう。本当に続くモーニングルーティンの作り方のガイドで、この方法をさらに詳しく解説しています。
環境は、アイデンティティと切り離されたものではありません。
どの「自分」が顔を出すかを決める手助けをしているのです。
「行動が十分に大きかったか」を問うのはやめる
これは、最も難しい考え方の切り替えのひとつです。
2つのトレーニングを想像してみてください。
トレーニングA
70分間運動する。
トレーニングB
仕事が長引いたので、8分間だけ運動する。
体を鍛えるという点では、当然トレーニングAのほうが効果は大きいでしょう。
でも、もうひとつの物差しがあります。
その行動とのつながりを保てたかどうか?
大変な日には、8分間が70分間では得られないものをくれることがあります。生活が思いどおりにいかないときでも、その習慣には居場所がある、という証拠です。
だからといって、小さな習慣をずっと小さいままにしておくべきだという意味ではありません。
成長は大切です。進歩も大切です。
いずれランナーはもっと遠くまで走る必要がありますし、書き手はもっと書く必要があります。スペイン語を学ぶ人には、単語カード1枚以上の練習が必要です。
ただ、強度とアイデンティティは、それぞれ違う時間軸で動いています。
最初のうちに最も大切なのは、ただ次のことを証明することかもしれません。
この行動は、自分の生活の一部だ。
そこから、少しずつ積み上げていけばいいのです。
進捗を見える化する
過去を振り返れることには、心理的に役立つ面があります。
記憶は、積み重ねを見せるのが苦手です。
6週間前の火曜日にした5分間の散歩を覚えていることはまずないでしょう。先月のなんでもない夜に読んだ8ページのことも、おそらく覚えていません。
一つひとつの行動は、記憶から消えていきます。
でも、まとめて見れば、大きな変化を表しているかもしれません。
ここで記録が役に立ちます。カレンダー、ノート、スプレッドシート、習慣トラッカー。
繰り返しの努力が目に見えるものなら、何でもかまいません。
アイデンティティは、「証拠」があるほうが信じやすいからです。
自分を無理に説得する代わりに、
前より続けられるようになってきた気がする。
実際に続けてきた週を見返せばいいのです。
Storey Appのアイデンティティへのアプローチ
私たちはStorey Appをこの考え方をもとにつくりましたが、少し違う比喩を使っています。
それぞれの習慣が建物になります。
その習慣を毎週何日行うかを自分で決めます。週の目標を達成すると、建物に1階分が積み上がります。
1週間では大したことがないように見えるかもしれません。1階分も同じです。
でも3か月、半年、1年たつと、自分が続けてきたからこそ存在するものを眺められるようになります。
大切なのは、仮想の建物そのものではありません。
建物は証拠なのです。
自分がやった。そしてまたやった。何度も。
やがて、その積み重ねは否定しがたいものになります。
この設計はとくにアイデンティティにとって重要です。ゼロにリセットされるトラッカーは、間違った教訓を教えてしまうからです。
1日できなかったとしても、それは積み重ねを一時的に止めるだけで、これまでに築いたものを消すわけではありません。
目標を達成した1週間は、1階分になります。週が積み重なれば建物になります。習慣が積み重なれば街になります。
街は、あなたがどんな人として毎日を重ねてきたかを目に見える形にした記録にすぎません。
記録そのものをアイデンティティにしない
ここには大切な区別があります。
トラッカーは行動を記録するものです。
行動そのものになってはいけません。
あなたは「完璧な連続記録を守る人」ではありません。
あなたは本を読む人です。走る人。書く人。貯める人。学ぶ人。瞑想する人。親に電話をかける人。その習慣が表すものなら、何でもそうです。
連続記録はやる気につながることもありますが、壊れやすくもあります。
アイデンティティのすべてが「途切れない数字」に支えられていると、1日休んだだけで急にとても大きなことに感じられてしまいます。
37が0になる。
でも、実際の進歩が0になったわけではありません。
あの本を読んだことも、あの距離を走ったことも、あのお金を貯めたことも、あの筋力をつけたことも、あの単語を覚えたことも、変わりません。
だから私たちは、完璧さを守ることよりも、積み重ねた進歩で考えるほうを大切にしています。
できなかったときに考えるべきなのは、こんな問いではありません。
連続記録を台無しにしてしまった?
大切なのは、こちらです。
なりたい自分なら、次に何をするだろう?
たいていの場合、答えは驚くほど平凡です。
もう一度始める。
連続記録が途切れたあとに再開する方法について、まるごと1本のガイドを書きました。中断から立ち直ることは、始め方を学ぶのと同じくらい大切かもしれないからです。
1日の失敗は弱い証拠にすぎない
半年間、週3回運動を続けてきた人を想像してみてください。
その人が1週間休んだとします。
その1週間は何を証明するでしょうか?
ほとんど何も証明しません。
そこには、だいたい2つの相反する証拠の山があります。
山A:何か月も運動を繰り返してきた記録。
山B:つらかった1週間。
それなのに、気持ちのうえでは山Bのほうがすべてより重いかのように扱ってしまいがちです。
ほらね。やっぱり自分には自制心がないんだ。
これは、データの解釈としてはずいぶん厳しすぎる見方です。
研究が示していることとも違います。フィリッパ・ラリーらが新しい毎日の習慣を身につけようとする96人を12週間追跡したところ、行動する機会を1回逃しても、習慣化のプロセスに実質的な影響はありませんでした。曲線は上がり続けたのです。[3]
1回の行動は証拠になります。ただし、弱い証拠です。
繰り返された行動は、より強い証拠になります。
何か月もかけて本を読む人になってきたのなら、4日間読まなかったからといって、突然「本を読まない人」になったわけではありません。
アイデンティティには、ふつうの生活の揺れを受け止められるだけの安定感が必要です。
だからこそ、一貫性とは完璧にこなすことではありません。習慣を続けるコツの記事では、一貫性を「時間をかけて、その行動に戻ってくる確率を高めること」と説明しています。
この定義は、アイデンティティにとくによく当てはまります。
あなたがなりつつあるのは、一度も中断しない人ではありません。
中断したあとにどうするかを、だんだんわかるようになっていく人です。
ネガティブなアイデンティティにも気をつける
アイデンティティが強化するのは、望ましい行動だけではありません。
次のような言葉を考えてみてください。
私はお金の管理がまるでダメだ。
私は怠け者だ。
どうせ朝型じゃない。
本を最後まで読めたためしがない。
何をやっても続かない。
こうした言葉は、ただ事実を述べているように感じられます。
でも、何度も繰り返していると、それが「指示」になってしまうことがあります。
「自分は何をやっても続かない人間だ」と信じていると、新しい習慣をやめることが、妙に筋の通ったことに感じられてきます。
やめて当然だ。いつもそうなんだから。
これは、同じ仕組みが逆向きに働いている状態です。行動がアイデンティティに合っていれば苦労は「大切だからこそ」の証拠と受け取られ、合っていなければ「やっぱり向いていない」という裏づけとして受け取られてしまいます。[1]
これは、現実の制約を無視すべきだという意味ではありません。
一時的な行動を、自分という人間の永久的な定義にしてしまわないよう気をつけよう、ということです。
1週間できなかった。それはひとつの情報です。
アイデンティティとは限りません。
こう決めるのではなく、
私には一貫性がない。
もっと正確な言い方をしてみましょう。
私が使っていた仕組みに、一貫性がなかった。
これで、変えられるものが見えてきました。
習慣が大きすぎたのかもしれません。きっかけが当てにならなかったのかもしれません。週の目標が現実的でなかったのかもしれません。環境に手間がかかりすぎたのかもしれません。あるいは、単にひどい1週間だっただけかもしれません。
自分を診断する前に、行動を診断しましょう。
「アイデンティティの証拠」を集める方法
性格をつくり直す必要はありません。
これからの1か月、次の方法を試してみてください。
ステップ1:アイデンティティをひとつ選ぶ
次の文を完成させてください。
私は______人になりたい。
シンプルにしましょう。本を読む。体を動かす。お金を貯める。書く。約束を守る。家族に電話する。練習する。外に出る。明日の計画を立てる。
ステップ2:証拠をひとつ選ぶ
こう問いかけてみましょう。
その人がとれる、いちばん小さな「本物の行動」は何でしょうか?
形だけの準備ではなく、実際の行動です。
読書なら、本を開いて読む。運動なら、体を動かす。書くことなら、書く。貯金なら、お金を移す。
ありふれた「ダメな日」でも続けられるくらい、小さな行動にしましょう。
ステップ3:現実的な頻度を選ぶ
「毎日」のほうが本気っぽく聞こえるからといって、何も考えずに週7日を選ばないでください。
その習慣に合った頻度を選びましょう。たとえば、
- 読書は週5日
- 運動は週3日
- 誰かへの電話は週1回
- 書くのは週4日
- 貯金は給料日ごとに1回
目的は、繰り返せることです。
ステップ4:行動の「定位置」を決める
安定している習慣に結びつけましょう。
コーヒーを飲んだら、本を読む。
仕事が終わったら、歩く。
給料日には、貯金する。
歯を磨いたら、日記を書く。
迷う余地は少ないほどいいのです。
ステップ5:証拠を記録する
シンプルな記録をつけましょう。
自分の価値を証明しようとしているわけではありません。
積み重ねを目に見えるようにしたいのです。
ステップ6:4週間後に振り返る
次のことだけを問うのはやめましょう。
目標の結果に届いたか?
こう問いかけてみましょう。
何が前より当たり前になったか?
体重は10ポンド(約4.5kg)減らなかったかもしれません。でも今では、たいていの週に3回運動しています。
本を6冊読み切れなかったかもしれません。でも夜になると、考えなくても本に手が伸びるようになっています。
貯金はまだ思うほど増えていないかもしれません。でも金曜日の振替は、もう自然にできるようになっています。
これらは意味のある変化です。
アイデンティティが根を張り始めているしるしです。
スコアより先に、生活が変わる
これは、習慣づくりでいちばんもどかしい点かもしれません。
結果がうれしいものになるより先に、行動が変わることがよくあるのです。
見た目が力強くなる前に、筋トレを始めます。口座の残高が増える前に、貯金を始めます。誰かに読まれる前に、書き始めます。健康の数値が動く前に、歩き始めます。読書家になった実感がわく前に、読み始めます。
努力はしているのに、外からの手ごたえがほとんどない時期があります。
アイデンティティは、その溝を埋めてくれます。
結果はこう言います。
まだだよ。
行動はこう言います。
もう始まっているよ。
マラソンはまだ走っていないかもしれません。でも、今日は走りました。
本はまだ書き上げていないかもしれません。でも、今朝は書きました。
経済的に自立しているわけではないかもしれません。でも、今週は貯金しました。
まだスカイラインはできていないかもしれません。でも、また1階分を積み上げました。
今日の証拠は、それで十分です。
明日、また増やしていけばいいのです。
よくある質問
アイデンティティに基づく習慣とは?
アイデンティティに基づく習慣とは、なりたい自分の姿と結びついた、繰り返しの行動のことです。「本を20冊読む」といった結果だけに注目するのではなく、それを裏づける行動を繰り返すことで「私は本を読む人だ」というアイデンティティを強めていくことに注目します。
アイデンティティに基づく習慣は本当に効果がある?
アイデンティティに基づく動機づけの研究によると、いま意識していて自分に関係があると感じるアイデンティティは、どの行動が努力に値すると思えるかに影響し、行動がアイデンティティと一致していると感じるかどうかで、難しさの受け止め方も変わることが示されています。[1]アイデンティティは実践的な習慣設計の代わりにはなりませんが、行動を長く変え続けるうえで意味のある要素だと考えられます。[2]
習慣で自分のアイデンティティを変えるには?
強めたいアイデンティティを選び、その証拠となる小さな行動を決めて、その行動を継続的に繰り返します。新しいアイデンティティを無理にすぐ信じ込もうとするのではなく、繰り返しの行動によって、少しずつ信じられるものにしていきましょう。
アイデンティティに基づく習慣の具体例は?
「今年は本を12冊読む」という目標だけを立てるのではなく、「日常的に本を読む人」になりたいと決めます。寝る前に5ページ読むことが、そのアイデンティティを支える小さな繰り返しの行動になり、そのアイデンティティが翌晩の読書を始めやすくしてくれます。
アイデンティティに基づく習慣はどのくらい小さくすればいい?
ありふれた「ダメな日」でも確実に繰り返せるくらいの小ささです。最初の形にも本物の行動は含めつつ、やる気がそれほどなくてもできるものにしましょう。量はあとから増やせます。より詳しい考え方はミニマム習慣のガイドをご覧ください。
アイデンティティに基づく習慣が途切れたらどうなる?
1回できなかったからといって、積み上げてきたアイデンティティが消えるわけではありません。習慣化の研究では、行動する機会を1回逃しても、その根本にあるプロセスに実質的な影響はないことがわかっています。[3]できなかったことを「判決」ではなくひとつの情報として受け止め、次に繰り返すまでの間隔を短くしましょう。
習慣トラッカーはアイデンティティに基づく習慣に役立つ?
役立つことがあります。記録をつけると繰り返しの行動が目に見える形で残るので、記憶だけでは気づけないときにも、積み重ねた進歩に気づきやすくなります。大切なのは、トラッカーはあくまで習慣を記録するものだということ。トラッカーを続けること自体が、身につけたいアイデンティティではありません。
習慣が自分のアイデンティティになるまでどのくらいかかる?
誰にでも当てはまる期間はありません。習慣化にかかる時間は、行動の内容、人、状況、繰り返す頻度によって大きく異なります。アイデンティティの変化も同じように一定ではなく、行動を繰り返すにつれて少しずつ進んでいきます。研究について詳しくは習慣化には何日かかる?をご覧ください。
簡単なQ&A
目標とアイデンティティ、どちらから始める?
目標は方向づけに使い、そのうえで、その結果を生み出す行動を繰り返す人物像を決めましょう。
アファメーション(肯定的な自己暗示)は必要?
いいえ。まだ本当だと思えないことを無理に信じ込もうとするより、証拠を繰り返し積むほうが役に立ちます。
まだその人になれた気がしなかったら?
それで大丈夫です。そのために繰り返すのです。
何が「進歩」に数えられる?
続けたいパターンを強める、本物の行動の繰り返しなら何でもです。
まとめ
目標は、自分が何を望んでいるかを教えてくれます。
習慣は、自分が何を繰り返しているかを教えてくれます。
アイデンティティは、その繰り返しによって少しずつ信じられるようになる物語です。
だから、方向を決めましょう。行動を小さくしましょう。行動の定位置を決めましょう。証拠がたまり始めるまで、何度も繰り返しましょう。
最初のいくつかの行動が取るに足らないものに思えても、心配はいりません。
大きなものは、ほとんどがそうやってできているのです。
1ページ。1回の散歩。1回の振替。1段落。1週間。1階分。
やがて振り返ってみると、何かが変わっていることに気づきます。
変わったのは結果だけではありません。
それを続けてきた、あなた自身です。
参考文献
- Oyserman, D., & Destin, M. (2010). Identity-Based Motivation: Implications for Intervention. The Counseling Psychologist, 38(7), 1001–1043. ↩
- Verplanken, B., & Sui, J. (2019). Habit and Identity: Behavioral, Cognitive, Affective, and Motivational Facets of an Integrated Self. Frontiers in Psychology, 10, 1504. ↩
- Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How Are Habits Formed: Modelling Habit Formation in the Real World. European Journal of Social Psychology, 40(6), 998–1009. ↩
ご注意:この記事は、習慣づくりに関する一般的な情報を提供するものであり、個別の医療、メンタルヘルス、金銭面のアドバイスではありません。服薬、リハビリ、栄養、睡眠、金銭上の義務に関わる行動については、一般的な習慣のアドバイスではなく、資格のある専門家の指導に従ってください。
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